- 計算機械からコンピュータへの歴史的発展 --- electronic calculator(電卓)とelectronic computer(電子計算機)という区分の成立
- 「四則演算だけを処理する機械」(calculator)から「四則演算以外にも、論理演算・比較演算・シフト演算・条件分岐・割り込み・データ転送などをあわせて処理する機械」(computer)への歴史的発展
足し算・引き算・かけ算・割り算(加算・減算・乗算・除算)の四則演算をおこなうための機械としての計算機(calculating machine,calculator)
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四則演算に加えて、論理演算・比較演算・シフト演算・条件分岐・割り込み・データ転送などをもおこなうことのできる機械としてのコンピュータ(computer)
マイクロプロセッサーの中核的モジュールとしての、ALU(Arithmetic and Logic Unit,演算論理装置)
- 「手動で逐次的に処理する機械」から「プログラムで連続的に自動処理する機械」への歴史的発展
電卓(電子式卓上計算機,electronic desktop calculator)とコンピューター(電子計算機、electronic computer)を区別する基準としての、プログラム処理機能の有無
- コンピュータ技術におけるマイクロプロセッサーの歴史的位置づけ
コンピュータにおける数値演算・論理演算を実際に実行する回路の構成素子(演算素子)は、手動歯車式計算機・蒸気動力歯車式計算機・電動歯車式計算機などといった機械式計算機における「歯車」から出発して、20世紀中頃から急速な歴史的発展を遂げた。ベル研究所
のModelI(1942) や、ハーバード大学のMarkI(1944)、富士写真フイルムFUJIC(1956)などのリレー式計算機では機械的な電気的回路である「リレー」が、ENIAC(1946)やEDSAC(1949)などでは「真空管」が用いられた。
そして「真空管」を演算素子とする第一世代のコンピュータから、「半導体を利用したトランジスタ」を素材とする演算素子へと技術革新が進展する中で、コンピュータの能力は、トランジスタの集積度の飛躍的向上とともに、
UNIVAC-1(1951),IBM-701(1953) といったトランジスタを演算素子とする第2世代コンピュータ、ICを演算素子として利用するIBM360(発表1964年、出荷1965年)やDEC PDP-8(発表1965年) などの第3世代コンピュータ、LSIを演算素子として利用するIBM4300(発表1979)などの第4世代コンピュータへと発展を遂げた。
<参考論文>
- 佐野正博(2010)「計算技術の歴史的発展構造」
<関連Web>
- コンピュータ技術の基本的発展構造
- インテル(Intel)社を中心としたCPU開発の歴史
- インテル社が開発したマイクロプロセッサーの技術的スペックの歴史的変遷
簡略版 詳細版
- 世界最初のマイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ) ---- Intel4004
- インテル社創立に至る時期の技術的背景 --- 真空管・半導体・LSI ----
[関連事項]キルビー特許
- インテル社関連日本語参考文献 一覧表
- CPU関連の技術戦略
- CPUアーキテクチャの継承性、および、CPUの互換性問題
- なぜIBMはIBM-PCに8088を選択したのか?
[関連参考事項]インテルのCPUのアーキテクチャ
パソコンの構成図
- パソコンの前史
- 日本におけるマイコン・キット時代---1976〜1978年
- パソコンの歴史
- MITS社のAltair8800---その商業的成功に関わる技術的要因の分析 ---
- The Homebrew Computer Club
- 1970年代後半のパソコン---MITS社のAltair8800以後のパソコン ---
- パソコン市場形成期におけるIBMの技術戦略
- IBM参入前のPC市場---- Altairの先駆的な「商業」的成功、そしてそれに続くアップルやタンディの成功、日本でもNECやSHARPによって8ビットCPUパソコンの時代に突入 ----
- IBMのPC市場参入が遅れた原因
- IBMのパソコン開発前史 --- IBM-PC以前の「パソコン」
- IBMのPC市場参入時の戦略 --- パソコン市場参入への遅れの不利を克服するためのオープン戦略
- IBM PCとマイクロソフト
- なぜIBMはIBM-PCに8088を選択したのか?
- IBM-PC発表当時の他社パソコンとの基本構成の比較
- IBM-PCの売り上げ
- パソコン事業に関わる技術戦略(Case Study)
- IBMのパソコン事業とNECのパソコン事業の立ち上げ時の類似点
NEC(日本電気)においてもIBMと同じく、それまでのコンピュータ部門がパソコン事業を立ち上げたのではない。コンピュータ部門にはコンピュータの専門家が多数いたにも関わらず、いや逆にコンピュータの専門家であったからこそ(というのも、新しく登場したCPUはそれまでのコンピュータの専門家にはオモチャのようなものであったからこそ)、パソコンの事業化を成し遂げたのはコンピュータ部門ではなかった。
IBMではドン・エストリッジをトップとするIBU(独立事業単位)が市場競争力のあるパソコン開発という特別プロジェクトを担ってIBM-PCを作り上げたし、NEC(日本電気)では1976年に新設されたばかりのマイクロコンピュータ販売部が部品としてのCPUを販売促進策の一環として開発したトレーニング・キットTK-80の予想外のヒットからパソコンという商品の誕生につながったのである。
もちろん両者の間には差異もある。IBMはマニア向けのパソコン市場ができあがった後の1981年という「遅れた」時期にPC市場に参入した結果として目的意識的にパソコン事業を立ち上げようとしたのに対して、まだ「比較的早い」時期に参入したNECは手探り状態での参入であった。すなわちNECがTK-80というマイコンキットの販売を開始した1976年の時点ではまだ日本にはPC市場が形成されてはいなかった。それゆえTK-80を販売したNECはパソコン登場に対する社会的期待の大きさを知らずに無意識的に一歩を踏み出したのである。
そうした違いは、アメリカでは1975年にAltair8800という「マイコンキット」からパソコンへの移行期的性格をもったパソコンがすでに販売開始され大いに人気を博し、1977年4月にはVisiCalcといった市販応用ソフトが動くAppleIIという現代的な意味でのPCにより近いパソコンが販売された後にIBMが参入したことによるものである。
- 関連用語の説明
- シリコンバレー(その名称の由来および地図)
- 関連資料および関連URL
パソコン技術の歴史関連URL
- CPUの歴史
- OSの歴史
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- パソコンの歴史
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- パソコンの理論的定義
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- アップル関連の歴史
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パソコン産業の歴史関連URL
Personal ComputerおよびPersonal Computingの歴史に関連する文献資料
Allan, Roy A.(2001). A history of the personal computer: the people and the technology,Allan Publishing,pp.528