October 29, 2005 作成
Last update:
November 22, 2013
技術戦略論(Theory of Technology-Strategy)
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参考資料>
講 義 用 暫 定 メ モ
[参考資料]http://www.sanosemi.com/biztech/document/Porter-Technology-Business2011.pdf
(1) Porterの3つの基本戦略generic strategies --- Cost Leadership, Differentiation, Focus
(2) Cost leadership戦略との関連で見たTechnology
(3) 「技術の集合体」としての企業 --- ポーターの価値連鎖(Value Chain)と技術
(4) ポーターにおける製品技術、製造プロセス技術と基本戦略
(5) 技術的リーダーシップ戦略vs 技術的追随戦略(2011.12.15再論)
(6)先駆者と技術的リーダーの区別 ---歴史的参入順序の問題と技術的独創性や技術的優越性の問題の区別(2011.12.15再論)
a.ポーターにおける技術的リーダー vs 技術的模倣者
| 技術的リーダー | 技術的模倣者 |
先駆者 | ○ | × |
後発者 | ○ | ○ |
b.歴史的参入順序の問題と技術的独創性の問題の区別
イノベーションの歴史的プロセスを具体的に分析すると、「製品イノベーションは必ずしも新技術から発生するわけではなく既存技術の新たな結合のしかたから発生する場合がある」こと[新結合に起因するイノベーションの存在]や、「製品イノベーションの基礎となる新技術のすべての構成要素が新しいわけではなく、先行の要素的技術がそのままの模倣の形でか一定の創造的変容がなされた形でかで利用されている場合がある」こと[新発明に関する"from copy to creation"的性格の存在]がわかる。
そのためポーターの想定とは異なり、企業がProduct Innovationの遂行に際して採用する技術戦略が、技術的リーダーシップ戦略と技術的追随戦略の両方の性格を持つ場合があることになる。
b.歴史的参入順序の問題と技術的優秀性の問題の区別
同一の技術的機能、同程度の技術的性能を実現可能な技術的方式は一般に複数存在する。そのため他社とは異なる独自の技術であるのかどうかという技術的独創性(originality)の問題と、他社にはない優れた技術的機能をもつのかどうかとか他社よりも優れた技術的性能を実現できているのかどうかという技術的優越性(superiority)の問題とは区別する必要がある。
および、Ptoductの次元とTechnologyの次元を区別すべきであるということから、先駆者/後発者という区別と技術的優位者(技術的リーダー)/技術的劣位者は区別すべきことになる。
例えば現在の電気自動車という製品イノベーションを取ると、現代的電気自動車における先駆者は三菱自動車のiMiEVである。しかし三菱自動車のiMievは製造コスト等の関係からインホイールモーターという最新技術を採用してはおらず、電気自動車技術という視点からは技術的優位とは位置づけられない。インホイールモーターを採用した慶応大学電気自動車研究室のエリーカは、製造コスト等の問題があり製品として市販されてはいないが三菱自動車のiMiEVよりも技術的優位性を持つものと位置づけることができる。このように、市場における先駆者のPoductが技術的に最も進んだProductであるわけでは必ずしもない。
(7) 同時発明による先駆者の複数性
(8) 技術と製品の区別
2. 技術戦略論的視点から見た先駆者戦略 vs 後発者戦略(2011.12.15再論予定)
[参考資料]http://www.sanosemi.com/biztech/document/first-mover_vs_follower.pdf
(1) 先駆者戦略のメリット(先発者first-moverの優位性)
1) 研究開発を少しでも早くから初めた方が技術的に先行することができ、基本的な部分に関する規格・仕様の決定や知的財産権の確保により、競合企業に対する相対的優位性を確保できる。また先行することによって一定期間利益を独占したり、より多くの経験を積んだり、特許を取得できる。
2) 限定的な資源や希少な資源に関して先発者は先取りすることができる
3) 顧客におけるスイッチング・コストが切り替えによるメリットよりも高い場合には先行製品からの乗り換えが生じない。
4) システム性を持った製品の場合には、ネットワーク外部性によるバンドワゴン効果(いわゆるネットワーク効果)、および、補完財によるバンドワゴン効果により先発者が有利になる。
5) 先発者はその市場におけるパイオニアあるいはリーダーという評判reputationを獲得でき、企業のイメージに関して長期的便益long-term image benefitsを獲得できる。
6) 先発者の累積生産量は市場参入時の後発者よりも大きい。それゆえ経験曲線効果から考えると、製品の製造単価に関して先発者の方が後発者よりも優位性を持つ。
(2) 後発者戦略のメリット(後発者followerの優位性)
1) 後発者は、市場形成のために必要な先発者コストを負担する必要がない。
2) 後発者は、市場開拓期および市場形成期の研究開発や生産設備に関して先発者が得た成果や築き上げてきた基盤に「ただ乗り」できる。
3) 技術革新が短期間に連続的に生じる場合には、特定の資産や仕組みにコミットした先発者は技術革新に遅れを取ることになる。
4) 新規市場の需要が明確になった後で市場参入することで市場形成の失敗リスクを避けることができる。
3. クリステンセンのイノベーション論
[参考資料]http://www.sanosemi.com/biztech/document/Christensen-theory-of-Innovation.pdf
1. 存続的イノベーション(sustaining innovation) vs 破滅的イノベーション(disruptive innovation)
2. 上位市場と下位市場・・・破滅的イノベーションは社会的成長の糧を下位市場でかせぐ
3. バリュー・ネットワーク ・・・技術管理に関わる組織ネットワークに関するパラダイム論的理解
組織の能力は一方では組織の無能力を意味する(企業の組織構造やグループは担当製品に対して最適化されており、組織ネットワークと技術システムの「一対一」的対応)
バリュー・ネットワークは顧客−販売業者−製造業者−部品納入業者という複数の関与者によって構成されている
互いに対立するバリュー・ネットワークを、同一組織が同時に持つことはできない
4. 企業のケイパビリティ(Capability)を規定している3要因 --- 価値基準(Value),プロセス(Process),資源(Resource)
4.バンドワゴン効果論 -- ネットワーク外部性によるバンドワゴン効果と補完財によるバンドワゴン効果
[参考資料]ライベンシュタインおよびロルフスのバンドワゴン効果論
http://www.sanosemi.com/biztech/document/bandwagon2010.pdf
(1) 心理的相互作用に起因するライベンシュタインのバンドワゴン効果論
ライベンシュタインは、個別需要の担い手間の3種類の心理的相互作用に起因する市場需要の非-線形性として、バンドワゴン効果[bandwagon effect、人々が他社と同じものを購入しようとする心理的傾向]、スノッブ効果[Snob effect、人々が他者と異なったものを購入しようとする心理的傾向]、ヴェブレン効果[Veblen effect、人々が低価格なものよりも高価格なものを購入しようとする心理的傾向]の三つを論じている。
(2) 需要サイドにおける「規模の経済」効果および「規模の不経済」効果としての、ロルフスのバンドワゴン効果論
1) ネットワーク外部性に関わるバンドワゴン効果
2) 補完財に関わるバンドワゴン効果
5.差別化およびコストに関する製品の技術的システム性と補完財の視点からの考察
[参考資料]http://www.sanosemi.com/biztech/document/product-differentiation-technology-complementary.pdf
(1) 製品イノベーションの成功・失敗の規定要因の一つとしての補完財
(2) 補完財の多種多様性
実際の事例分析に際しては、「補完財」概念を拡張して、研究能力、ハードやソフトウェアなどに関する知的財産権および製品開発能力、製品に関するユーザーの使いこなし能力、製品に関するユーザーの知識まで拡張する必要がある。そうすることで、ゲーム機やパソコンなどの製品イノベーションの歴史的展開形態をより良く理解できる。
6.「旧い」技術に基づく製品から「新しい」技術に基づく製品への製品イノベーションの社会的普及の「成功」と「失敗」を規定している諸要因 --- Function、Performance、Cost、補完財、知的財産権、製品開発能力、ユーザー層の構成[最後の授業以降に一部訂正した部分あり]
(1) Function、Performance、Cost視点からの考察
製品イノベーションの方向性の一つは、製品が持つFunctionの数を増加させることである。携帯電話の製品イノベーションはその典型例である。すなわち携帯電話は、登場初期は音声通話機能しかもたない製品であったが、電話帳機能、カメラ機能、ビデオカメラ機能、Webサイト閲覧機能など次第により多くの機能を搭載するようになり、多機能携帯端末(ケータイ)へと製品の性格が変化していった。
製品イノベーションに際して一般に良く取り上げられるのは、製品のPerformanceを向上させることである。しかしPerformanceの向上が製品イノベーションにおいて常に有意味であるわけではない。Performanceに関しては各製品セグメントごとに、市場で求められる最低限度と、それ以上はdemandの量的増加をもたらさないなど有意義な影響をもたらさない上限性能がある。
ex.1 音楽メディアにおけるCDからSACD(Super Audio CD )やDVD-Audioへの製品イノベーション
ex.2 VTR製品におけるVHSからS-VHSへの製品イノベーション、あるいはβUからED-Beta(ED-βU)への製品イノベーション
製品の性能向上の実現にはしばしばcost増加が伴う。というのも、高性能性を実現するためのモジュールは従来のモジュールよりも高コストであることが多く製造Costの増加をもたらす。また製品本体の高性能化にともなって、消耗品やソフトウェアなど補完財の高性能化が必要な製品の場合には、製品本体の機能を享受するためのランニングコストの増加をしばしばもたらす。(補完財の高性能化の実現に必要な製造コスト増加という要因だけでなく、製品イノベーション初期には製品本体の市場規模だけでなく消耗品や補完財の市場規模も小さいということも、既存製品の消耗品や補完財の価格よりも、新世代製品の消耗品や補完財の価格の方がしばしば高くなる要因の一つである。)
顧客が製品を購入できる価格、より正確には、ランニングコストやスイッチングコストなども含めたコスト負担が可能な総額には顧客によって異なるが一定の上限が存在する。製造コスト、ランニングコスト、スイッチングコストなど顧客が負担すべきコストが顧客が購入可能な価格を上回るような製品は社会的に大きく普及することが困難である。またその一方で企業は製造コストを下回るような価格で製品を販売することは一般にはない。それゆえ性能と同じく、市場で取引される製品の価格にも上限と下限が存在する。
(2) ユーザー層の構成という視点からの考察 ---> 主たるターゲットに応じた製品のあり方の歴史的変化を考察することの重要性
- イノベーター(Innovators=革新者、革新的採用者、市場全体の2.5%)
- アーリー・アダプター(Early Adopters=初期採用者、初期少数採用者、あるいは、オピニオンリーダー、市場全体の13.5%)
- アーリー・マジョリティ(Early Majority=初期多数採用者、市場全体の34.0%)
- レイト・マジョリティ(Late Majority=後期多数採用者、あるいは、followers フォロワーズ 追随者、市場全体の34.0%)
- ラガード(Laggards=採用遅滞者、あるいは、伝統主義者、市場全体の16.0%)
7.製品イノベーションの構造(再論)
(1) ゲーム専用機のハードウェアに関する3つのコア技術
1) 製品イノベーションに関わる2種類の技術 --- 製品技術のイノベーションと製造技術のイノベーション
2) 製品イノベーションにおける技術開発の基本的方向性
a. 製造コスト低減
b. 新規機能の実現
c. 製品性能の向上
d. 前世代機との互換性維持 --- 補完財によるバンドワゴン効果の利用
(2) 照明製品に関する製品イノベーション
白熱電球→蛍光灯→電球型LED照明
蛍光灯型LED照明が電球型LED照明と比べて普及が遅れている理由に関するバンドワゴン効果論的視点からの説明
有機EL照明技術の将来的普及過程と、液晶技術に基づく製品の普及過程との間のアナロジー
8.歴史的コンテクストの中での技術に関わる経営判断
http://www.sanosemi.com/biztech/document/case-study-IBM-PC-2011.pdf
10.ケーススタディ分析のための「技術戦略論」的視点
(1)一番手戦略 vs 二番手戦略 --- イノベーションの性格による戦略優位性の変化 ---
イノベーション・マネジメントにおいて実践的に重要な問題は、製品イノベーションの先頭に立つ「一番手戦略」を取るのか、それとも後から製品イノベーションを追いかける「二番手戦略」を取るのかということである。
しかし先駆者が有利なのか追随者が有利なのかはケースバイケースである。「市場を先に取る」ことに関する先駆者の優位性(パソコン産業ではインテルやマイクロソフトなどのように、パソコン市場形成期における先駆的企業が先行者の優位を生かして成功をおさめている。また携帯電話におけるインターネットサービスにおいては、NTTがiモードでの先行により優位な地位を占めている。ポータルサイト市場では、市場形成期にExcite、Infoseek、Lycosなどの競合企業との競争に打ち勝ったヤフー(Yashoo!)が強く、追随者はあまり成功していない。)の一方で、「先駆者は製品イノベーションに伴う問題点やリスクに直面する。そうした問題点やリスクが明らかになってから市場参入をするかどうかを決める」ことに関する追随者の有利性もある。
「先駆者」が有利なのか、「追随者」の有利性を生かせるのかどうかということは、イノベーションの性格によって異なる。
こうした問題に関して、クリステンセンは Christensen,Clayton M.(1st 1997,revised 2000),The Innovator's Dilemma: When New
Technologies Cause Great Firms to Fail,Harvard Business School Press[邦訳 伊豆原弓訳,『イノベ−ションのジレンマ ---
技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』(増補改訂版 ) 翔泳社,2001年]においてハードディスク業界等を例に取りながら、同一のバリュー・ネットワークによって対応可能な持続的イノベーションにおいては先行しようが多少遅れようがたいした問題ではないということを実証的に論じている(たとえば、同翻訳書,pp.172-176を参照のこと)。クリステンセンよれば、「率先して持続的技術を開発し、採用した企業が、出遅れた企業より競争上、あきらかに優位に立ったという事実はない」(同翻訳書,p.176)のである。またクリステンセンは、同一のバリュー・ネットワークによっては対応不可能であり新しいバリュー・ネットワークによる対応が不可欠な破壊的イノベーションにおいては先行者が有利であることを論じている。
「持続的イノベーションなのか、破壊的イノベーションなのか」ということによって、「一番手戦略を取らないと絶対的に不利なのか?二番手戦略を取り後発者の優位性を生かせるのかどうか?」ということが変わるという視点から市場形成期のパソコン産業を考察すると、パソコンはメインフレームやミニコンとは異なるバリュー・ネットワークに属する製品であるから、技術的イノベーションで先手を取り製品開発をおこなう一番手戦略の方が相対的に有利であることになる。
このことは8ビットパソコン市場においてFDDに早くから対応するとともに搭載メモリーを他社よりも大きくしたアップル社の技術戦略や、16ビットパソコンを世界最初に販売開始したIBMの技術戦略などの成功にみることができる。
1981年におけるIBMのパソコン市場参入に関しては、2面的理解が可能なことに注意する必要がある。1981年におけるIBMのパソコン市場参入は、16ビットパソコンを世界最初に販売開始したという意味では、一番手戦略であるとして位置づけることができるが、1975年のMITS社のAltair8800や1977年におけるApple社、Tandy Radio-Shack社、Commodore社の商業的成功の後の数年後に参入したという意味では二番手戦略として位置づけることもできる。(たとえば、クリステンセンは上記書p.186において、IBMは二番手戦略を取り、新しい市場が「うまみのある規模になる」まで参入を控えることによって成功した、としている。)
(2)IBMにおける、IBM PC以前の「パソコン」開発の「失敗」に関わる諸要因 ---- 有能なマネジメントによる組織的有能性が組織的無能力でもあるというジレンマ
Christensen(伊豆原弓訳,2001)『イノベーションのジレンマ 増補改訂版』翔泳社のp.18では、「組織の能力は無能力の決定的要因になる」という刺激的なタイトルのもとにこの問題が論じられている。クリステンセンは「ミニコンの設計を管理するのに有効なプロセスは、デスクトップ・パソコンの設計には不適切だろう。また、収益性の高い商品を開発するためにプロジェクトの優先順位を決定する際の価値基準は、収益性の低い商品に当てはめることはできない。」と主張している。クリステンセンによれば、組織を構成する個々の人間はきわめて柔軟性が高いが、そうした柔軟性の高い諸個人から構成される組織の柔軟性はきわめて低い。組織が一定の価値・目標・理念に従ってきちんと組織化されていればいるほどそうである。したがって、ある特定の製品特性(例えば高利益率、高信頼性など)を持つ製品・サービスに対応した組織は、それとは反する製品特性(例えば低利益率、低信頼性など)を持つ製品・サービスには対応困難である、ということになる。
IBMが1980年に新たなパソコン・プロジェクトの立ち上げに際して、IBMの従来型組織から切り離された独立組織であるIBU(Independent Business Unit、独立事業単位)を設置することでパソコン事業をうまく成功させることができたのは、こうした「有能なマネジメントによる組織的有能性が組織的無能力でもある」というジレンマの回避策として理解できるものであった。
組織的行動の方向性を規定するValue Network(規範的な価値体系)という要因
---- イノベーションを遂行する組織を支配するValue Network(規範的な価値体系)----
「メインフレーム(大型計算機)」の開発・製造に適したValue Networkと、「パーソナル・コンピュータ」の開発・製造に適したValue
Networkという異なる二つのValue Network
IBMは、1975年のIBM 5100 Portable Computerに見られるように、「個人がスタンドアローンで使うコンピュータ」を製造することができたが、「個人が買うことのできる手頃な値段のコンピュータ」を製造することには成功しなかった。
メインフレームという高価格・少量生産=少量販売の製品に適応するように適切な形で組織されていたIBMの従来型組織は、高利益率・高信頼性・高コストの製品に最適化された組織であり、低利益率・低信頼性・低コストの製品の開発・製造には不向きであった。
「メインフレーム」的Value
Network |
大企業の基幹業務向けコンピュータ |
↓ |
|
↓ |
安定性・信頼性を重視
(価格よりも安定性や信頼性が重要)
|
小量生産・小量販売 |
↓ |
↓ |
多少値段が高かったとしても
より安定で信頼できるもの
であれば構わない
|
営業マン経由での販売 |
↓ |
利益率が高い市場 |
|
vs |
「パソコン」的Value
Network |
個人購入=個人利用向けコンピュータ |
↓ |
|
↓ |
価格を重視
(安定性や信頼性よりも価格が重要)
|
大量生産・大量販売 |
↓ |
↓ |
少し不安定で信頼性が低くても、
あるいは少し性能が低くても
より低価格の方が好ましい
|
小売店経由での販売 |
↓ |
利益率が低い市場 |
|
|
<参考Webページ> 佐野正博(2003)「イノベーションに関するクリステンセンの見解」 |
|
メインフレーム |
ミニコン |
パソコン |
価格 |
極めて高価格
(数十万ドル〜) |
高価格
(数万ドル) |
低価格
(数百ドル〜数千ドル) |
利用場面 |
大企業の基幹業務で
専門部署が
使うコンピュータ
|
中小企業や研究所などで
集団または個人で
使うコンピュータ |
企業または自宅で
個人が単独で
使うコンピュータ |
重視項目 |
極めて高い
信頼性・安定性 |
信頼性・安定性 |
価格
(個人が買える
手頃な価格) |
関連参考Webページ>佐野正博(2004)「メインフレーム、ミッドレンジコンピュータ、ワークステーション、パソコンの日本国内における出荷台数・出荷金額の歴史的推移」
(3)メインフレーム産業とパソコン産業における産業構成(産業アーキテクチャ)の差異
(4)IBUが課題遂行のために取った事業戦略 --- パソコンという製品の特性に適した事業構成(事業アーキテクチャ)の選択
-
販売チャネルの変更 --- 大量生産・大量販売に適した販売チャネル(ターゲットとする顧客層の違いに対応した販売チャネル)への変更
従来のIBMの販売チャネル(メインフレームのような高価格品を少量販売するのに適した販売チャネル)とは異なる販売チャネルの利用 ・・・
大企業の専門部署や経営トップに対するダイレクト・セールス中心の販売から、シアーズ・ローバック社やコンピュータランド社などの小売店経由による一般消費者に対する間接販売中心の販売へ
(ただしパソコンをメインフレームの端末として売り込む場合は、パソコンはメインフレーム事業の中の一構成要素としての性格が基本となることから、従来型の販売チャネルが利用されることになる)
-
製品の構成部品や構成ソフトに関する外部の経営資源の活用 ---- 低価格化・開発期間の短縮などが目的
---- 製品の構成要素(パソコン本体を構成するCPUやマザーボードなどのハードウェア部品、および、パソコン本体の動作に必要な基本ソフトウェアであるOSソフトなど)に関わる事業戦略
----
OSやCPUなどの主要な技術的構成要素に関しても、外部の経営資源を活用(アウトソーシング)
- 開発・販売開始まで約1年間という時間的制約の克服
- 市場で一定の評価を得ており、一定の信頼性がある製品の活用
インテル系CPUの採用、マイクロソフトの開発言語(BASICなど)の移植
- 補完財(補完資産)の速やかな充実のためにサードパーティの活用およびオープンアーキテクチャ戦略を採用
- 市場で一定の評価を得ており、一定の信頼性がある企業の製品開発能力の活用
-
オープン・アーキテクチャ戦略の採用 ---- 製品に対応するアプリケーション・ソフトや対応周辺機器の素早い充実が目的
---- 製品の補完財(パソコン本体に対する補完財としての、対応アプリケーションソフトおよび対応周辺機器)に関わる事業戦略 ----
パソコン産業における後発者としての立場に対応した戦略
ハードウェアとしてのパソコンに対する補完財としてのソフトウェアや周辺機器の重要性
先発者が築いているハードウェアに対応するソフトウェア群や、ハードウェアに対応した周辺機器群に匹敵するものを早急に確保することが、競合他社との競争を成立させるための条件として必要不可欠であった。そうした対応ソフトウェアや対応周辺機器の開発を促すためには、自社製品のアーキテクチャのオープン化が必要不可欠であった。すなわち、対応ソフトウェアや対応周辺機器に関して外部経営資源を活用するためには、オープン・アーキテクチャの戦略が必要不可欠であった。
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「互換性維持」重視戦略
パソコンという製品の構成要素(構成部品+基本ソフト)、および、補完財(対応アプリケーション・ソフト+対応周辺機器)のそれぞれに関して内部経営資源および外部経営資源の有効活用を考える際には、「既存部品・既存ソフト・既存周辺機器がどの程度まで利用可能なのか?」という「既存構成要素・既存補完財の活用可能性」、および、「どのようにすれば自社の製品に対応する構成部品・対応基本ソフト・対応周辺機器をより低コストで新規開発できるようになるのか、あるいは、より短期間で新規開発できるようになるのか?」という「新規構成要素・新規補完財の開発可能性」に対する配慮が必要不可欠である。
新規製品の低コスト/短期間での開発・製造、補完財の低コスト/短期間での充実を考えた場合には、先行製品との「互換性」維持を重視した戦略が取られることになる。というのも、そうすることにより、「既存構成要素の活用可能性」がより高くなるとともに、既存構成要素に対応する開発能力・開発知識の有効活用が図られることにより低コスト/短期間での「新規構成要素・新規補完財の開発可能性」がより高まることになるからである。
もちろん新製品の開発・製造がまったくの一からスタートする場合には、すなわち、これまでの既存製品とはまったくの関連を持たない形で無から新規に開発・製造する場合には、これとはまったく戦略が採用されることになる。
(5)外部の経営資源の活用(アウトソーシング)におけるコア・コンピタンス確保の重要性